狂人日記

いろんな事に興味あります(´・ω・`)①格闘技(MMA、K-1等)②歴史全般③ゲーム、アイマス④動物⑤その他諸々...

一色出版『スポーツの世界史』を読む

 いきなり自分語りから始めさせてもらうと、自分は子供の頃からスポーツにあまり関心がなく、むしろ体育の授業等でやりたくもない競技をやらされることに苦痛を感じる程ではあったのだが、スポーツがどう産まれ、歴史的にどういう役割を果たしてきたかという点についてはやはり興味がある。そう思って手に取ったのがこの本。


坂上康博/中房敏朗/石井昌幸/高嶋航[編著]
『スポーツの世界史』一色出版 2018

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 本書は冒頭部分で著者が述べている通り"読み物として面白い一般読者向けの「スポーツで読む世界史」"となっており、娯楽として誕生した球技等の「あそび」がルールの整備により「スポーツ」として体系化していくと同時に、近代国家の成立過程で人々にどう許容され、発展していったかを中心に各国・地域別にまとめられている。帯に載っている章立てを見てもらえば分かるが、正に「世界史」と名乗るにふさわしい範囲が網羅されている↓
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 よく「スポーツと政治は切り離して考えるべき」と言われるが、この本を読むとスポーツが政治や軍事、その他諸問題と不可分な関係であることがよく分かる。英国を中心としたヨーロッパは世界でいち早く近代的な国家形成を成し遂げ、それと共に近代スポーツの基礎も作り上げられていったが、その発展の過程には若者の暴力性を発散するための役割や、政府側としても国民統合のためのツール、あるいは有事に備えた国民の体力向上を目的としてスポーツが盛んに奨励されたという側面もあった。スポーツを通じた国威発揚ナショナリズムの形成は社会主義国において顕著に見られたが、実際は国家の大小や主義に関わらず、ほとんどの国が五輪等の大舞台を国家の威信を示す場としてみなしていた。人種やジェンダー、階級等におけるスポーツ上の様々な「規制」は先人達の努力によって解消されつつあるが、いまだ完全に解決されたとは言い難い。この本にはスポーツの発展における光と影を映すと同時に、スポーツがもたらす友好あるいは対立についても知ることができ、今や単純な「娯楽」にとどまらないスポーツをめぐる国際情勢についても窺い知ることができるのである。
 B6サイズとはいえ全650ページ強ある分厚い本だが、各章ごとの区分けは割と短くまとめられている一方、歴史好きであれば興味深いトピックが数多く出てきて最後まで飽きずに読むことができるし、国・地域ごとに分けられているため自分が興味ある部分だけをチョイスして読み進めていくことが可能であり、また図版も豊富に使用されているため、読み手にあまり負担をかけさせない作りになっている。難点は定価4,500円というそれなりにするお値段だが、巻末のパスワードを使ってWebにアクセスすれば電子版を読むことができるだけでなくカラー版の図版も閲覧できるという充実っぷりなので、興味のある方は一度手に取ってみるのはいかがだろうか。
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(´・ω・`)ノシ